この物語はフィクションです。

First002:虚構の境界

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書斎のイメージ

 あぁ、良く来てくれた。おや、君は……もしかして、君が新しいメンバーか?
 いや、名乗らなくても良い。ここでは名前なんて何の意味も持たない。あいつもそう言っていただろう?
 私か? 私は……ただの世話好きな爺さ。あいつの代わりに、ここの掃除やら、本の整理をしているんだ。
 いや、そんなことよりもだ。君という奴は、ずいぶんと強運の持ち主のようだ。実はな……今朝、新しい虚構図書が開いたんだ……その、まだ誰も調べていない虚構があるんだ。

 驚きだろう? ここ数年間……そう、私の記憶が確かなら、ここ5年間は一度も開かなかった虚構図書が今になって、それも今朝になって、突然開いたんだ。
 まるで君が来るのを待っていたかの様にね。
 どうだね? 君が試してみるかね? 虚構図書に興味があるから来たんだろう? 虚構を知るには、虚構図書に触れるのが一番だ。用心は必要だがね。

 何? 怖いのか……まぁ、分からんでもないがな。
 なら、誰か来るまで待つかね? 一人で行くよりも、道連れがいた方が怖くはなかろう?

 私か? 私は駄目だ。
 知っての通り、ここは虚構図書を知る者が集まる場所。誰かが道案内をしなきゃならんし、潜るにはちょいとばかし歳をとりすぎた。その分、知識を身につけたと言いたいところだが、虚構図書の謎を解き明かすには、時に常識が邪魔をすることがある。水中で呼吸できると信じなきゃならんかもしれんし、鉄砲で撃たれても死なないと思い込まなきゃならない時もある。歳を重ねると、なかなか昔の様にすんなりとは受け入れられなくなっちまうんだ。つまり、私は適任者とは言えないのさ。

 あいつか? 確かに、あんたよりは適任だろうな。
 あいつはすでにいくつかの虚構図書を知っている。そのつながりの一部を把握しているとも言える。だからこそ……いや、おそらくの話だがな。
 そんなことよりもだ。あんたはもっと自信を持っていいはずだ。あいつが選んだ奴なんだからな。

 行く気になったのかね?
 では、虚構に旅立つ者への儀式だ。目を閉じて……そう、そのままでいい。聞いてくれ。簡単な説明をしよう。そうさな、昔風に言えば、旅立つ者への戒めと、励ましの言葉だ。
 知っての通り、虚構とは、仮想の現実。嘘、偽りの世界のことだ。
 だから、どんな困難な夢でも簡単に叶うし、ほとんどすべてが思い通りになる……それ故、常識は通用しない。心を空にして、あるがままを感じるんだ。そこに真実が眠っている。

 では、君に尋ねよう。我々は何者なのか? 何を成そうとしている者か?
 答えは一つ。その謎を解き明かそうとする者だ。
 強く、強く念じるんだ。
 思いは力に。力は真実を覆い隠す幻を切り裂く武器となるだろう。

 虚構に触れる者は、その虚構に彩られた物語に隠された真実を見つけ出さなければならない。それは時にいくつかの答えを与えるかもしれないし、新たな謎をへと繋がる後味の悪さを残すかもしれない。しかし、現実に戻るためには、その鍵となる真実に辿り着かなければならない。
 君がこの虚構図書に隠された真実に到達し、現実と虚構の狭間……言うなれば、『虚構の境界』を行き来する『解明者』の一人となることを信じているよ。

 さぁ、ゆっくりと目を開けて。この本を開いて、そこに記された文字を眺めるんだ。
 そうだ。読めるだろう? 君ならば読めるはずだ。その文字を読み進めるんだ。そう……そうだ……そう、リラックスして……。
 やがて、君は最初に行き着く場所へ……皆が言う、蒼の世界へ降り立つはすだ。
 その時は、思い描いた自分のあるべき姿を、その強い意志で、確りと名乗ると良い。
 まずはそこから。
 すべてはそこからだ。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月04日

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