この物語はフィクションです。

First005:汝の隣人

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書斎のイメージ

 へぇ、あんたが新しいお隣さんなの? 随分と若いのね。それとも、若く見えるだけなのかしら。
 ようこそ……と、言いたいところだけれども、良くこんな辺鄙なボロアパートを借りる気になったわねェ。まァ、あたしも他人のこと言えないけどさァ。
 ところで、あんた、お酒持ってない? お酒呑めないほどお子様ってわけじゃないンでしょう? 持ってたら、少し頂けないかしら? あ、別に奢って欲しいって言ってるわけじゃないのよ。ただ、ちょっと切らしちゃってて、あんたが持っている様なら少し分けてもらいたいなァと思っただけなのよ。

 え、これくれるの? 凄いじゃない。本当に貰っちゃっても良いの? 本当に? 良いの? 悪いわねぇ。別に、お酒なら何でも良かったんだけど……本当、こんな良いもの貰っちゃって、悪いわねぇ。

 え? 聞きたいこと? 何よ。下心があってお酒くれるの? 若いくせに結構な世渡り上手ねェ。
 いいわ、何でも良いわよ。お姉ェさんが教えて上げるわ。

 え? 最近起きた有名なジケン? ジケンって、事件? あんた……新聞も読んでないの? 最近って言えば、覆面強盗強盗事件が有名じゃない。
 どこの銀行って? 本当に知らないの? あんた、何処から来たのさ。それとも、字が読めないのかい? まァ、あたしには関係ない話だけど……いいさ、教えてやるよ。こんなに良いお酒貰っちゃったしね。
 でも、廊下で立ち話ってのも何だろう? あんたの部屋、入っても良いかい? あたしの部屋? 嫌だよ。あんた、初対面の相手をあたしが自分の『部屋』に入れるわけないだろう。バカなこと言ってないで、さっさとお茶でも入れな……あ、そうだ、このお酒呑んでみようかねェ。せっかく貰ったんだから……そうだ、あんた、肴買っておいでよ。話はそれからだよ。

 そうさ。
 あれは、半月くらい前のことかな。
 この街の南外れの方の銀行で、覆面強盗があったんだ。
 人質が取られて、半日くらい立て篭って、それで犯人は自首して、誰も怪我人もなく犯人は逮捕されたんだけれども……肝心のお金が見つからなかったのさ。

 可笑しな話さ。覆面強盗は金庫を開けられなかったと言うし、銀行側は覆面強盗が金を盗んだ。だから、金庫から金が消えたって言うんだよ。可笑しいだろう? でも、本当に可笑しいのは、そんな銀行に金を預けていた連中の顔さ。
 可笑しいったらないよ。
 他人に預けるほどの金を持っていた連中の金が消えたんだ。愉快じゃないか! あたしゃ、しばらく笑いが止まらなかったよ。

 え? その銀行の名前? えっと……なんて名前だったかねェ。
 名前は分からないけれど、場所なら分かるから、案内してやろうか? でも、そんなのどうするのさ? だいたい、そんなのあんたに何の関係があるのさ?

 あァ、まァ……それこそ、あたしには関係のない話なんだけどね。
 いいさ、じゃァ、明日でも一緒に行ってやるよ。でも、それだけだよ。
 あんたは、場所が分かれば良いんだろ? だったら、地図だけでも良いと思うけど、あんた、この街に来たばかりみたいだからさ、あたしの親切心ってことだよ。

 別に、あんたのことなんかどうも思ってないんだから……勘違いしないでおくれよ。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月07日

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