この物語はフィクションです。

First006:密室遊戯

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書斎のイメージ

 お客様、長らくお待たせ致しました。
 すでにご承知のことと存じますが、先月末に覆面強盗の襲来を受け、何かと業務が滞っておりまして……誠に申し訳ありませんが、只今のところ、当行ではどの様なご身分のお客様であろうとも、当行でお預かりしている金品のお払いと返品に応じることは致しかねます。

 残念ですが、今回の業務の一部停止は、警察ならびに公官庁からの指導によるものでして……お力になることはできません。当行としましても、お客様にご迷惑をおかけすることを心苦しく思っておりますが、如何様にも致しかねます。誠に致し方ございませんが、今日のところはお引き取りください。

 ……お預けですか? お金を? それとも、貴重品を?
 それなら、話は別です。少々、お待ちください。契約書面のご用意をさせていただきますので、どうぞ、あちらの席でお待ち下さい。長くはお待たせしません。
 次の方、どうぞ。

 申し訳ありませんが、只今のところ、当行ではどの様なご身分のお客様であろうとも、当行でお預かりしている金品のお払いと返品に応じることは致しかねます。
 申し訳ありませんが、他のお客様をお待たせしておりますので、これでお引き取りください。
 次の方、どうぞ。

 申し訳ありません。
 お待たせしました。どうぞ、こちらが契約書類です。お目通しください。それから、サインはこちらと……ここ、ここにもお願いします。お預け入れ金額はこちらに。そうです。ありがとうございます。
 貴重品のお預け入れはいかがなさいますか? 必用でしたら、貸金庫の契約が必用になりますので、別途、こちらの書類にサインをしてください。
 では、金額の確認をさせていただきますので、今しばらく、お待ち下さい。

 ありがとうございました。金額の確認ができました。当行にて、大切に保管させていただきます。
 それでは、貸金庫にご案内します。

 どうぞ、こちらが貸金庫室です。
 いえ、大金庫室の場所についてはお答え出来ません。何と申され様とも駄目です。
 ですが……どうぞ、ご安心ください。あの様な事件が起きる以前から、大金庫を開けるための鍵は当行以外の場所にて厳重に保管しております。この意味がお分かりですか? 開けて取り出す事は不可能なのです。ですから、あの事件の様なことは二度と起きないでしょう。そう、二度とね。
 あァ、お客様の貸金庫の鍵はこちらです。どうぞ。

 え? 鍵が合わない? 本当ですか? すいませんが、失礼致します。
 ……と。これは……お待ちください。すぐに確認いたしますので、こちらへ。
 お客様、通路まで下がってください。こちらの指示に従ってください。

 鍵をお預かりします。
 それから、彼は警備員です。彼の目の届く範囲でお待ち下さい。

 いえ、お客様を疑っているわけではありません。
 もしもの時の用心です。ご理解ください。
 私の立場では……多分に申し上げ難い事なのですが、ここ最近になって、これまで起こりえなかった不思議なことが起きるのです。例えば、今回の鍵の様に……私どもも許認可を受けた銀行業者として、プロ意識を持ってお客様に接しております。間違えても、今回の様に、鍵が合わないなどと……決して、その様な失態がないように細心の注意を払っております。

 しかし、思いもよらないことが起きてしまう。
 何かが違う……いや、違って来ている様な気がします。
 まるで、取り返しのつかない悪夢を見ている様です。

 いえ、すいません。
 今の話は忘れてください。
 こちらでお待ち下さい。鍵を……鍵の確認をして参りますので……。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月08日

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