この物語はフィクションです。

First010:私報取引

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書斎のイメージ

 なるほど。君の言いたいことは分かった……が、それは随分と都合の良い話だな。
 君は、自分のことは話せない……でも、真犯人は別にいるので信じて欲しいと言うわけだ。

 仮に……君の言い分が正しかったとして、それを証明するための手段があとどれだけ残されているだろうか? 事件当日の君の所在を証明してれる知人が思い当たらないのであれば、君自身も本件の不審人物の一人であることに代わりはないと言うのに……君自身は気付いていないかもしれないが、君は警察からも目をつけられている。あの時、銀行で大げさに立ち回り過ぎた所為でね。
 これは捜査の基本だが、闇雲に動き回るだけでは真相に近づくことなんてできない。まして、調べている事件の容疑者に数えられるなんて……本末転倒も甚だしい。

 なんだ? 言いたい事があるのか?
 ここ最近の貸金庫の利用者を調べろって? 貸金庫の最後の利用者が怪しいと……言うのか? それは……確かに、鍵穴に細工を出来た可能性が高いのは、最後の利用者だが……あァ、銀行には貸し出しの際の記録書類が残っているだろうから、そこから追跡することはできるだろう。
 それと大金庫の金が無くなっている事と……どう関係すると言うンだ?

 考えても始まらない……荒唐無稽な話だ。
 だが、君た言うと、どうにもしっくり来るから不思議だ。

 ……なァ、ここは一つ、ギブアンドテイクと行こうじゃないか。
 君は俺の捜査に協力する。俺は君が不審人物でないことを警察に証明する……どうだろう? なかなかにフェアは取引じゃかなかろうか? 君は今後も自由に巷を動き回って事件を調べることができる。俺は君の協力を得て、真相に近づくことができる。どちらにも充分に利益がある取引だと思うが……どうする? 断ってくれても構わないが、その場合は君は警察の厄介になるであろうことを付け加えておこう。

 ありがとう。
 君の協力が得られて嬉しいよ。それでは、君は今から俺の助手だ。
 もしも、もしも、警察に説明を求められた場合には、俺の名前を出してくれ。そして、業務上の機密であるため、依頼主との守秘義務にあたり何も答えられない旨を告げる様にしてほしい。
 それから……これは俺の事務所の地図と、その連絡先だ。君から俺に伝えたいことがあれば、ここに連絡して欲しい。俺から君に伝えたいことがある場合には、今日の様に君を尋ねて来るとしよう。

 それにしても……君は見た目以上に頑固だな。
 自分の意見は絶対に曲げない。そのくせ、見るべきところを見ていて、容易に捨て置くことができない意見を平然と言う。その様子は……まるで、結末の全てを知っているかの様な素振りだ。それを洞察力と呼ぶのは的外れなのだと思わせるほどにだ。
 思うに……君という人間は、俺を含めたその他大勢の人間とは違う星の下に生まれて来ているのだろうな。その強運で、この事件の真相へと俺を導いてほしいものだ。

 では、俺はこれで引き上げるとしよう。
 明日、君の言う通り、貸金庫の利用者名簿を当たってみようと思う。進展があれば、夜にでも寄らせてもらおう。
 君の読み通りであるならば、明日の夜も君と顔を会わせることになると思うと、楽しみでならいよ。あァ、これは冗談だから……それじゃァ、良い夢を。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月16日

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