この物語はフィクションです。

First014:橘京介

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書斎のイメージ

 あァ、あれが件の橘京介の館の様だ。
 まァ、必ず在宅しているとは言えないが……その時は、帰宅まで張り込むことになるだろうからそのつもりでな。
 それから、俺に何かあったら、君はすぐに警察を呼ぶこと。俺は派手に暴れて注意を引いておくつもりだが、いよいよ危なくなってきたら命乞いをしてでも逃れるつもりだ。だから、君は一刻も早く警察を呼ぶことに注力してくれ。
 え? あァ、これは拳銃さ。弾は五発。心もとない数字だが、丸腰よりははるかに良い。できるだけ使わずに済ませたいことに代わりはないがね。どちらにしても、相手の出方次第と言うところだ。

 さて、ここからは俺一人の方が良いだろう。
 君は塀伝いに行って、中の様子が伺えるくらいの穴のある場所を見つけて、身を潜めていてくれ。
 何かあれば、先ほどの銃声を鳴らすから、その音と思ったら、構わないから警察を呼んで来ておくれ。

 心配するな。
 そうそう打ち合いになどなったりはしないよ。
 あァ、人影が見えるぞ。どうやら、中に誰かいるらしい。本人であれば、話が早いというものだ。
 それじゃあァ、行ってくるよ。

 ……なるほど。
 彼が浅生美優紀か? そして、君が網走久美なのかな?

 あァ、警戒はよしてくれ。こちらはもう目的の品を手中に収めている。今更、君と争うつもりは毛頭ないよ。
 というよりも……既に勝敗は決していると言えよう。
 虚構図書の神髄……確かに素晴らしい力だった。
 君が欲しがるのも無理ないと思うよ。だが、残念なことを教えてあげよう。この虚構の世界にある真の虚構図書は、私が手にした一冊のみだったようだ。
 ははは……あまりの残念さに、声も出せないかね? だが、その苦悩もキャラクター越しでは不十分だ。君たちの絶望した顔は、やはり現実世界の君たち自身の顔で楽しみたいものだ。

 そのためにな……せめもの情けだ。この指輪を受け取りたまえ。
 いやいや、警戒の必用はない。すでに、私たちの勝敗は決しているのだから……この指輪は、君か浅生美優紀のいずれか一人が現実世界に戻るために必用になるものさ。さァ、遠慮はいらない。受け取りたまえ。そして、現実世界で再び、私を追いかけてくるが良い。
 否、君たちは私を追いかけなければならない。いずれか一人は……この閉ざされた虚構の世界に残らなければならないのだからな。この虚構の世界を自由に行き来するためには、真なる虚構図書の加護が必用なのだ。今更、別の虚構図書を紐解く余裕はあるまい。つまり、君たちは私が手に入れた虚構図書を求めることが、唯一、この世界に置き去りにされた仲間を救う手段足り得るのだ。
 追ってこい。そして、現実世界で相見えよう。その時こそ、開放された虚構図書の力を目の当たりにした恐怖に怯える君たちの顔を見せてくれ。
 ふふふ、ははは……これは何とも愉快でならないな。

 そうそう、呪文は「アーブ、メセタ」だ。この指輪を填めて、そう唱えるだけで、この悪夢から目覚めることができるだろう。
 だが、正確に唱えたまえ。「アーブ、メセタ」だ。唱え間違えると、資格喪失と看做されて、再び蒼間棟に送り返されることになるかもしれんぞ。その時は、もう戻りの切符はないのだ。永久にこの虚構の世界を彷徨うことになるだろう。
 だが、そんな結末は許さない。君たちは、もっと私の手の平の上で踊るべきなのだ。力尽き、命尽きはてるまで踊る道化でなければならない。
 良いな! 「アーブ、メセタ」だ。間違えるなよ!

 それでは、ごきげんよう。
 君の仲間の相川則行殿によろしくな。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月19日

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