この物語はフィクションです。

First015:現実回帰

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書斎のイメージ

 ふゥむ、中には誰もいなかった……が、そこかしこに等身大の人形が置かれていた。蝋人形と言うのか、さながら死人の館だ。動かないのが不思議なほど精巧な……この世の地獄の様だったよ。
 おい、どうした? 随分、顔色が悪いが……おい。

 俺が館に入ってすぐに現れたと言うのか。
 おそらくは、そ奴が橘京介本人なのだろう。
 それで、他に何か……奴は何と言っていたんだ? 犯行を仄めかす様なことを口走らなかったか?現実世界で待つだって? 何のことを言っているのか……さっぱりだな。
 まァ、これだけの犯罪を犯す輩だからな、正常でない精神の持ち主であっても何ら不思議はないが……しかし、その言い口では、もう一度、奴を見つけることができたとしても、常識的な解決方法を受け入れさせるのは骨が折れそうだ。

 それで、君としては、この後はどうするつもりだ? 足取りを追うにしても……もう、この館に戻って来るとは考え難い。
 奴としては、その異国の日記を金に代える手だてがありさえすれば良いわけだからな。後は、再び代物が世に出た時に、奴との関わりを探すくらいのことしか俺には思い浮かばないが……。

 ……なるほど。
 奴は手放すつもはないと……だが、それでは、奴はどうして、そんな物を欲しがったと言うのだ? 金銭目的ではないのか? いや、その日記に、金銭的価値以外の魅力が……例えば、古書としての歴史的価値とか、内容の芸術的評価から、奴はそれを盗んだのではないのか?
 こんな大掛かりなことをしでかしてまで? 単に自身の所有欲を満たすことだけが目的だったと言うのか?
 なァ、君は知っているンだろう? 奴の目的を……いや、その日記の本当の価値を! そろそろ教えてくれないか? いつまでも秘密の中に締まっておくのは猾いぞ。

 なんだ……例え話か? あァ、その話なら知っている。一枚の金貨が入った箱の話だろう? 有名な話さ。
 たしか……結末は、金貨一枚よりもその外側の箱の方がはるかに価値があって、中に入っていた金貨一枚を争うよりも、もっと広い見識で真に価値あるものを見つけなければならないという話だろう? だが、それで今の状況の何を例えると言うんだ? さっぱり意味がわからない。
 例えるのであれば、もっと分かり易い例え方をしたまえ。

 魔法の呪文だって? 唐突に何を良い出すんだ? 何だ、その指は……君は指輪なんてしていなかっただろう? おい。何を……。
 って……。

 人が……消えるなんて……そんな。
 いや、消えたとは限らないのかもしれないが……落ち着け。
 手品にしては巧妙。しかし……仕掛けは? ここは野外の路上。仕掛ける暇など……。
 本当に消えたと言うのか? 消してしまえると言うのか……その方法が、書かれていたと言うのか。
 大金庫の金も、窃盗団も、その方法で消えてしまったとしたら、確かにつじつまは合う。だが、それでは橘京介が消した……ということなのか。

 だが、消して何になる?
 消しただけでは何の意味もないだろう?
 そんな無意味なことが……そうか。それが一枚の金貨。その秘法が記された日記が、今や奴の手元にあるということか。
 恐ろしいな……殺すのでも、奪うのでもなく、痕跡すべてを消し去る秘法。
 だが、消すとは……その先に何があると言うのだ? 消えた君は、何処に行ったというのだ?

 そうか……それが箱を意味するということか。
 では、俺は君の帰還を信じて、私の成すべきことを為すこととしよう。

おことわり

 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、機関、施設等とは一切関係ありません。肩を張らずに読める読み物としてお楽しみください。

物語

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最終更新日:2008年11月20日

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